NHKホットスポット オーストラリア編

NHKで時々やっているホットスポットの番組.オーストラリア編ということで初めて見ました.時間の流れとドラマを意識した映像には圧倒.さすがNHK….とりあえず印象に残った内容のメモ.

・ フクロミツスイは,哺乳類で最大の大きさの精子をもつ(クジラよりも大きい).睾丸の大きさは人間に例えると,スイカを2つぶら下げているようなものである.フクロミツスイは短期間に複数のオス(交尾を求めてきたすべて)と交尾する.そのため精子がメスの体内で競争することになる.乾燥地でエネルギーを使ってオス同士が戦うよりも,精子競争をした方が効率が良い.そのためこのような戦略が進化した.
アカカンガルーは,人間の何倍もの長さのアキレス腱をもつ.このアキレス腱が大きなバネのようになり,速いジャンプが可能になる.このジャンプによって乾燥地での水を求めての移動が可能となる.では,このような形質はどのように進化したのだろうか.有胎盤類の祖先のネズミのような生物と,アカカンガルーミッシングリンクも発見されている.それが今でも熱帯雨林が広がるニューサウスウェールズ州に生息するニオイネズミカンガルーである.ニオイネズミカンガルーの姿形はネズミのものだが,後ろ足が発達しておりジャンプすることができる.熱帯雨林ではワニなど天敵が多く,それらから逃れるためにこのジャンプ力が適応的だったものと考えられている.オーストラリアで乾燥化が進むと,このジャンプ力を移動に利用できるようになった.そこで,まず小型のカンガルーであるワラビーが進化したと考えられている(乾燥地では岩場など高い場所に立って,外敵が来ないか見たほうが便利なので,後ろ足で立つような形質が生まれた).
アカカンガルーの天敵としては野生イヌのディンゴが挙げられる.なおこのディンゴアボリジニが持ち込んだ生物である.オーストラリア本土での肉食動物としては,フクロオオカミが挙げられるが,この種はディンゴとの競争の末,絶滅した.
アカカンガルーは,外で育てている子,袋の中で育てる子,そして受精卵と3つの命を同時に育てることができる.乳首は4つあるが,うち2つは成長した子,残りは袋の中の未熟児用である.母乳の成分は乳首によって違い,未熟児用の乳首からは成長に必要なタンパク質,脂肪などを多く含んだもの,成長した子用の乳首からは草からはとることができない脂肪を多く含んだものとなっている.また,受精卵は環境が悪い条件下ではその発生を一時的に止めることができる.アカカンガルーはこのように未熟な状態で子どもを産み,また,複数の子育てを同時に行うことで,母親の安全を確保し,包括適応度を上げることができるように進化している.
有袋類に加え,有胎盤類も最近まで生息していたことが最近分かった.しかし,有袋類の上記のような戦略は環境条件の変化が著しい(雨がなかなかふらない)オーストラリア内陸部では有利に働き,有袋類が残ったものと考えられる.