ちがくのススメ

地学のツボ―地球と宇宙の不思議をさぐる (ちくまプリマー新書)

地学のツボ―地球と宇宙の不思議をさぐる (ちくまプリマー新書)

最近ハマっている分野のひとつ「地学」
今まで地学は全く勉強したことがなかった.中学校は高校入試がなかったので,興味があまりなかった地学分野は定期テスト前にちょっと勉強したくらい.高校は生物と化学のみ.もっぱら科学的な趣味は生物に偏っているから,もうかれこれ3年地学に触っていない事になる.

そんな遠い存在だった地学.「石ころなんてどうだっていいや〜」と思っていた自分だが,
2年前期に入り,なぜか「地球科学」という講義を受講することにした.

理由は大きな声では言えないが笑,他の理系科目を落としたときのための保険である.
そんな理由で受けた地学の授業・・
それが結構おもしろい.その授業の内容に合わせて,先日「地学のツボ」という本も買ってしまった.


最初の授業では,最近起こったアイスランドの火山噴火が取り上げられた.
ざっと調べた事もつけくわえて振り返ってみると..

アイスランドはちょうど2つの大陸プレートの境界に位置する.プレート(Plate)とは日本語に訳すと「岩盤」のことであり,地殻と上部マントルを合わせた部分を指す.このプレートは結構固いのだが,少々の流動性も持っている.

これらのプレートが離れる事で,地下のマグマが上昇.それらが吹き出す事で海の中の山脈,海嶺ができる.
それが部分的に地上に出てきているのがアイスランドというわけだ.

今回その海嶺の中のマグマだまりが上昇し,噴火が起きたのだが,ここアイスランドの火山噴火が大規模になった理由として,アイスランドの気候の影響がある.

アイスランドはヨーロッパ北の島国であり,火山には氷河が存在する.
熱いマグマが地上に近づき,氷河によって急冷されたらどうなるだろうか.

氷に熱(エネルギー)を加えると,水,そして水蒸気に状態変化するだろう.
このとき,水分子の自由度が高くなって体積が増えることが分かる.

体積が増える事によって,マグマの大規模な噴火が起こるのだ.

また,大規模噴火によって散らばった火山灰が上空の対流圏を越え,成層圏(11km〜50km)に達すると,ちょっと大変だ.

この成層圏はちょうど雲の上にあたり,雨でも地上に落ちてこない.そのため,風に乗って広い範囲に広まってしまうのである.
アイスランドが位置する緯度地帯は偏西風(西⇒東)が吹く,
そのため火山灰の被害がアイスランドから西の国々,ヨーロッパ諸国へ被害が広まってしまう.

そして,飛行機は気圧や雲の位置の関係からちょうど成層圏を飛ぶ.つまり,飛行機が飛ぶ位置と火山灰が舞う位置がちょうど重なってしまうのである.
その結果,今回のように飛行機が飛べなくなる事態が生じたのだ.

──というような感じで今回の火山噴火が説明でき,とても感動した.具体的なイメージがなかった幾つかの現象が,化学や物理等の知識を応用して,結びついたのがおもしろかった.
ところで今回の火山噴火にしても,地球上至る所でおこる地震にしても,それは地球の表面がプレートで構成され,そのプレートが動いているという「プレートテクトニクス論」に基づいている.この「地学のツボ」によると,プレートテクトニクス理論は1960年代に登場し,21世紀の今でも進行中の新しい理論なのだという.しかしその新しい理論が現在の教科書に掲載されている.筆者によるとこの最先端さこそ地学の特徴であり,魅力であるのだと言う.確かに新しい理論を使って,身近に起こっている大きな自然現象を説明できる,これはとてもおもしろい.理論と現象の繋がりが本当にはっきりと見えてくるのだ.

その意味では生物と地学は似たような性格を持っているように感じる.物理や化学は古くからの研究に基づく.生物や物理はそれらを応用して,身近な自然現象を探る.生物を勉強するうえで物理や化学が必ず必要なのは最近ひしひしと感じるが,やはり地学も物理や化学を深く理解すればもっと面白みが実感できるのだろう.


ところでこの「地学のツボ」は自分にとって新しい発見ばかりだった.

・月は地球に巨大隕石がぶつかり,地球の破片が集まってできたものだということ(ジャイアント・インパクト説).これは月の岩石の成分が地球のものとよく似ているという事実に指示されるという事.
・地球の水は地球に衝突した氷を含む彗星などによってもたらされた事.また周りの環境の温度変化をおさえる水の存在が生命誕生に結びついた事.
・コンパスのNが北を指すのは地球が磁場をつくっており,北極側にS極があるから.この磁場が有害な太陽風放射線)の防御壁になり,生命の存在を支えている事.オーロラはこの放射線が地球の磁場をすり抜け,酸素分子や窒素分子と衝突して発光することで見える事(だから北極・南極でしか見られない).
・プレートはコールドプレームという形で核にもぐりこみ,ホットプレームという形で核から地上へと上昇し,新しいプレートができること.
・・・などなど

──本当は理学部生なら知っとかなきゃってこともあるんだろうけど・・笑 
やはり今まで避けていた分知らないことばかりだから余計に面白さを感じるということもある^^

この面白さは以前日本国憲法を勉強したときに感じた面白さだ笑

これを機に今まで手をつけてなかったいろいろな分野をかじってみたいなと思った.例えば経済学とか,歴史学とか,古典数学とか・・
専攻に入る前にそんな分野に接してみたい.